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本部⇔店舗間の『情報共有』の“理想形”とは?—【番外編②】『RFタグ』から“売れない”を探る

番外編①「画像認識」

こんにちは、髙橋です。
本年6月から10月連載の「本部⇔店舗間の『情報共有』の“理想形”とは?」の番外編第2弾をお届けします。
番外編①では「売れない」を探るための《IT:情報技術》ということで、最近の画像認識についてお話ししました。
今回は、小売業界でも最近なにかと話題の『RFタグ(ICタグ)』『RFID』について考えたいと思います。

1.はじめに
(1)『RFタグ』と『RFID』の基礎知識
◎『RFタグ』/『RFID』とは

・『RFタグ』
ID情報を記録したICチップや小型アンテナが組み込まれたタグ(荷札)。
*ICタグ/電子タグ/無線タグ/RFIDタグなどとも呼ばれますが、今回はJIS(日本工業規格)が定めた『RFタグ』という名称で話を進めます。
*タグの種類も、電池を内蔵しない「パッシブタグ」と内蔵型の「アクティブタグ」に大別されますし、コイン型/ラベル型/カード型や、柔軟性が高く曲がるタイプもあり、一辺が1mm以下とサイズも小さくなっています。用途や機能によって使い分けが必要ですが、詳しい説明は割愛します。

・『RFID』:Radio Frequency IDentification
電波や電磁波を介して、リーダー/ライターで『RFタグ』のデータを非接触で読み書きするシステム。
*電波と電磁波の違いや通信法方法等、技術的な説明は省きます。

身近な例だと、回転寿司チェーンで価格別の皿に埋め込まれているのが『RFタグ』で、それをスタッフがリーダーでまとめて読み取って皿数をカウントするのが『RFID』です。また、SuicaやPASMOなどの交通系カード、nanacoやWAONなどの流通系電子マネーといわれる非接触ICカードも広義の『RFID』です。最近では『RFタグ』を人体に埋めこもうという試みも始まっています。

(2)「バーコード」との違い
現在広く活用されている「バーコード(QRコード含)」は、商品のバーコードにリーダー(スキャナー)を、または固定のリーダーに商品を近づけることが必要ですが、他にも考えられる『RFタグ』との主な違いをまとめてみました。

バーコードとRFタグの比較

2.チェーンストアにおける導入例(最近の記事より)

RFタグ/RFID活用プロセス

慢性的な人手不足で苦しみ、業務効率化による生産性向上を模索しているチェーンストアにとって、魅力的かつ期待の《IT:情報技術》である『RFタグ』と『RFID』は、上図のようなプロセスにおいて、各社でさまざまな取り組みが始まっています。

◎取り組みの事例

(1)ローソン
業界初の完全自動セルフレジ機「レジロボ®」とRFID(電子タグ)の実証実験
2017年2月に、入荷した商品に『RFタグ』を取り付けて、専用の「スマートバスケット®」に入れた商品をセルフレジ「レジロボ®」で精算する実証実験を開始

(2)大手コンビニ5社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、NewDays)
全コンビニに無人レジ 大手5社 流通業を効率化 ICタグ一斉導入
経済産業省と共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」
2025年までに国内全店舗にセルフレジを導入し、全商品に『RFタグ』貼り付け

(3)セブン-イレブン
店舗の検品時間20分の1 ICタグで負担軽く、種類や数をカゴごとに確認
店舗に商品を運ぶ専用カゴに、商品の種類や数量を記録した『RFタグ』を取り付け、納品後の1店舗あたりの検品時間を20分の1に短縮するための実証実験を開始

(4)ファーストリテイリング
GU(ジーユー)
再成長を占う「デジタル店舗」 電子タグ・モニター活用 カートでコーデ提案
「オシャレナビカート」:カートのセンサーで『RFタグ』を読み取り、モニター画面でスタイリング提案
「オシャレナビミラー」:鏡の前で商品の『RFタグ』を近づけると、スタイリング提案や商品レビューを表示
「セルフレジ」:レジボックスに入れた商品の『RFタグ』を読み取り、精算処理を自動化
ユニクロ
世界でICタグ 瞬時に精算 在庫管理も
上記GU「セルフレジ」により、精算時間が通常レジに比べて最短で3分の1に短縮されたことを踏まえて、店舗の生産性を高めるためにユニクロ含め全店(約3000店)への導入を計画

*本記事は掲載時点の情報であり、予告なく変更または削除される可能性がございます。予めご了承ください。

3.想定されるメリット

『RFタグ』と『RFID』導入により、チェーンストアの店舗においては下図のような効果が想定されます。

RFタグ/RFID導入の効果

■メリット1:生産性向上

人手不足という状況のなかで、店舗のオペレーションレベルを維持し売上UPを図るためには、業務の効率化→生産性向上が必要です。そこで『RFタグ』と『RFID』に注目が集まっています。

①検品作業

以前は納品された伝票と商品を目視で照合していた時代もありました。最近はバーコードによるスキャン検品が主流ですが、前項で挙げたセブン-イレブンのように、納品された商品と数量を瞬時に読み取り検品できるとなれば、大幅な作業低減が図れますし、検品ミスもなくなるでしょう。

②店内在庫の確認/棚卸

在庫の確認や棚卸は、いわば店内商品の検品であり、検品と同様の効果が期待できます。

③販売~レジ会計

現在の1商品ごとのバーコードスキャンではなく、前項のローソンやGUのようにセルフレジでの『RFタグ』一括読み取り精算となれば、レジ会計の所要時間の短縮が実現できます。

*お客さま一人あたりのレジ会計時間短縮によるレジ台数削減というコストメリットも考えられますが、通常POSレジに比べて、高機能セルフレジは高価なはずなので見込まないこととします。

■メリット2:商品管理

生産性向上ほどの数値的効果ではありませんが、店舗運営上のメリットが見込まれます。

①不正防止

まず考えられるのは万引き防止ですが、内部不正の抑止にもつながります。また数字に表れない部分としては、不正を監視したりだれかを疑ったりという精神的ストレスも低減されるでしょう。

②販売期限管理

現在コンビニではインストアラベルのスキャンによって、弁当やおにぎりを中心に当日の販売期限をレジでチェックしていますが、『RFタグ』に記録された製造/出荷日から販売期限の管理が可能となります。

③トレーサビリティ

最近は生鮮商品を中心に「製造者の顔が見える」商品も増えていますが、書き込みが可能な『RFタグ』は各流通段階で必要な情報を追記できるので、トレーサビリティの精度も高まります。

④真贋判定

自社商品を販売している店舗にはあまり関係ありませんが、本物/ニセ物の判断が必要となる中古品の買取店などでは非常に有効な判断材料となります。

今まで店舗での効果を中心に話を進めてきましたが、「生産性向上」や「商品管理」という課題はチェーンストア全体に関わる事柄です。「RFタグ/RFID活用プロセス」の図にも記載したメーカーから、倉庫/配送センターなど各流通段階のサプライチェーン・マネジメント(SCM:Supply Chain Management)としても、『RFタグ』と『RFID』に対する期待は大きく、導入企業では効果も上がっているようです。

■メリット3:マーケティング

上記(1)生産性向上や(2)商品管理の改善はチェーンストア全体の課題ですが、どちらかと言えば「内部向き≒守り」にあたります。コストをかける以上は「外部:お客さま向き≒攻め」が当然必要で、売上UPに結び付くような“マーケティング”的な利活用が重要となります。

①欠品防止/②品揃え改善

『RFタグ』と『RFID』を介して、よりきめ細かく商品動向が捕捉できることになるので、売れ行きに応じた次の一手が打ちやすくなります。逆にいえば、そこに注目してデータを活用すべきです。

③商品提案

前述GUの「オシャレナビカート/ミラー」のように別の追加デバイスは必要ですが、最適なタイミングで商品を説明し提案することで、お客さまのイメージも膨らみ購買につながる可能性も高まります。店舗スタッフの確保やレベルアップが難しい昨今、接客支援という面でも有効でしょう。

④購買行動把握

ユニクロの『RFタグ』取り付けの記事では、「お客さまがいつ商品を手に取り、その商品が売れたか棚に戻されたのかの情報も得られる」との記載があります。これはフィッティングルーム(試着室)で何着か試着して、最終的にはどの商品を購入したかも把握できるわけで、今回のテーマである“「売れない」を探る”につながる画期的な情報となります。

“マーケティング”的ということでいえば、スマホアプリやソーシャルメディアとの連携、ECとの連動など、『RFタグ』と『RFID』はこれからもさまざまな形で発展していくでしょう。 *上記GUでは既に取り組みが始まっています。

4.今後の課題

とはいえ、『RFタグ』と『RFID』の導入~利活用には、さまざまな課題があります。

課題その1:コスト

 (1)『RFタグ』

しばらく前は『RFタグ』1枚あたり10円以上、ここ最近でも5円前後といわれています。GU/ユニクロのような「アパレルの製造小売業(SPA:Speciality store retailer of Private label Apparel)」で『RFタグ』と『RFID』の導入活用が先行したのは、自社製造であることと、商品単価もそれなりでコストを吸収しやすいこともあります。
1枚5円の『RFタグ』をコンビニで取り扱っている数十円の商品に取り付けるのは非現実的ですが、経済産業省と大手コンビニ5社の「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」もあり、1枚あたり1円を割る時代になれば、『RFタグ』の普及も一気に加速します。鶏が先か、卵が先か・・・

 (2)『RFID』用機器や周辺システム

『RFタグ』用のリーダー/ライター、不正防止用であればゲート、さらに通信用のアンテナなどのハードウェアや、読み取ったデータを蓄積/管理するデータベース、活用するために集計/分析するためのソフトウェアも必要であり、店舗の規模や活用用途に応じたコストが発生します。

課題その2:『RFタグ』の取り付け

前述2017年2月のローソンの実証実験では、入荷した商品に手作業で『RFタグ』を取り付けたと聞いていますが、通常運用ということになれば当然ながら手作業というわけにはいきません。メーカーの製造段階で『RFタグ』の取り付けが必須となるので、メーカーと折衝しなければなりません。
さらに、店内調理のおでんや揚げ物類はどう対応するのかという課題もありますし、お弁当のように電子レンジで温める商品の場合は、『RFタグ』の取り付け方法など対応を考える必要があります。

課題その3:プライバシー

個人情報漏洩につながる可能性もあります。経済産業省と総務省では「ガイドライン」を公表しており、プライバシーを守るための運用上の注意や対策が求められています。
また『RFタグ』は「短距離無線機器」にあたる電波法令に従うだけでなく、心臓ペースメーカーを含む医用電子機器への影響などにも注意する必要があります。

5.まとめ

ちょうど昨年の今頃、アマゾンの無人店舗「Amazon GO」の発表があり、大きな話題となりました。中国や韓国では既に無人店舗が稼働しているそうですが、先月にはJR東日本が大宮駅構内に特設で無人コンビニ店舗をオープンし実証実験をおこないました。
いずれも、前回お話しした「画像認識」と「AI(人工知能)」を組み合わせた店舗のようですが、いろいろな企業がさまざまな形で動き出しています。少子高齢化という時代の流れのなか、各方面で「働き方改革」にも取り組んでいますが、今後もチェーンストアの人手/人材不足という状況が解決されたり、好転に向かうことは望めないでしょう。

上記のような大きな課題はありますが、《IT:情報技術》は恐ろしいスピードで進化しています。コンビニに限らず「電子タグ1000億枚」がクリアされれば、『RFタグ』と『RFID』のコストは劇的に下がり、日常の買物は「AI」と『RFID』が連携した「ハイブリッド型無人店舗」などになり、チェーンストアのあり方自体が変貌を遂げる時代も、そう遠からずやってくるのでしょう。