こんにちは。Shopらんチームの上野谷です。「接遇マナー」という言葉を耳にしたことはありますか。 「接客マナー」と似ていますが、両者は本質的に異なります。接遇マナーを身につければ、状況に応じたワンランク上の接客が可能です。そこで今回は、接遇マナーの基礎や考え方について解説します。接遇マナーを自店舗に取り入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
「接遇マナー」とは、端的に言えば「接客」よりもう1段階上のホスピタリティー技術です。接客マナーが外面的かつ基本的な礼儀作法に留まるのに対し、接遇マナーではよりお客様の気持ちに寄り添った真心からのおもてなしが求められます。 通常の接客よりも相手との距離をさらに縮められる接遇マナーは、ホテルや小売販売といった接客業はもちろんのこと、医療や介護の世界でも重要視されているスキルです。お客様の内面に寄り添うことで、より細やかで温みのあるサービスの提供が可能となります。
接遇マナーには、一般に5つの原則があるとされています。以下、それぞれの原則について見ていきましょう。
挨拶は接客に限らず、コミュニケーションの基礎となる動作です。相手に先んじて明朗快活な声で挨拶を投げかければ、おのずと好印象を与えることができます。爽やかな挨拶でお客様の好感を得ることができれば、続く会話も自然と弾むようになるでしょう。 ただし、闇雲に声をかければよいというものではありません。相手に寄り添い、状況に合わせた挨拶を心がけることが大切です。
身だしなみは、第一印象に直結する重要なポイントです。お客様に不快感を抱かせない、清潔感のある装いに気を配りましょう。また身だしなみにおいては、見た目だけでなくニオイへの配慮も忘れてはいけません。
ひとつ注意点として、「おしゃれ」と「身だしなみ」を履き違えないようにしましょう。「おしゃれ」は自分の好きなように着飾ることであるのに対し、「身だしなみ」とはTPOに合わせた服装を選ぶことです。自分本位ではなく、あくまでお客様の目線に立って、衣服のほかアクセサリーや靴、お化粧、香水などを適切に見繕う必要があります。
第一印象は表情によっても大きく左右されるでしょう。言葉を耳にするより前に、人は相手の表情を読み取って距離感を測ります。基本となるのはもちろん笑顔です。口角の上がった優しいスマイルで向き合うことによって、お客様に親近感を持ってもらえるように努めましょう。
ただし、単に貼り付けたようなつくり笑いを続けているだけでは、相手に寄り添った接遇マナーとはいえません。お客様の話に耳を傾け、場合によっては一緒に悲しんだり残念がったりというような、共感を滲ませる接し方が求められます。
接客マナーでの柱となる「立ち居振る舞い」は、接遇マナーにおいても重要です。ネットの口コミなどで「店員の態度が悪い」というクレームをしばしば見かけるように、態度の良し悪しはお客様から目につきやすいポイントといえます。
接客マナーでは、往々にして歩き方や立ち方、手の出し方や物の受け渡し方といった所作に重点が置かれます。一方、接遇マナーにおいて求められるのは、形式を超えたお客様との親身な接し方です。整った姿勢で相手にきちんと正対し、目線や歩く速さを合わせるなど、好印象につながる振る舞いを意識しましょう。
5原則の残るひとつは「言葉遣い」です。お客様への思いやりを表すには敬語が基本でしょう。ただし、通り一遍の敬語を形式的に並べればよいというものではなく、相手の年齢や立場の違いに配慮した言葉選びが重要です。
さらに、接遇マナーを意識するなら声の抑揚にも気を配りましょう。話し方から受ける印象は、イントネーションによっても大きく変わります。相手に無愛想と受け取られることのないよう、はっきりと抑揚のついた話し方を心がけてください。
接遇マナーとは、コミュニケーション能力であると同時に心構えでもあります。研修を受けたり、マニュアルや動画で作法を学んだり、チェックリストで所作を確認したりするだけでは、高度な接遇マナーを身につけることはできません。
心構えとして最も重要なのは、対応する相手の気持ちに寄り添うことです。たとえば、スタッフがお店の利用者に声をかけるにしても、まずそれが必要かどうかを察する観察眼が求められます。1人でショッピングを楽しみたいというお客様にとっては、声がけはかえって迷惑と捉えられてしまうでしょう。 また、相手のニーズを引き出す際には、静かに傾聴する姿勢も欠かせません。本当に求めていることをすぐには口には出さないお客様もいらっしゃるでしょう。電話応対に限らず、お客様の声に真摯に耳を傾けることで、より満足度の高いサービスや商品を提供することができます。
まとめ
接客マナーでは一つひとつの動作に注目しますが、接遇マナーではその基本にある心構えを重視します。接遇マナーの基礎がしっかり確立されれば、どのような状況であっても臨機応変に、真心を尽くしたお客様の喜ぶ対応がとれるようになるでしょう。