こんにちは、Shopらんチームの小坂です。
私は前職のアパレル企業に新卒で入社し、4年間ほど店長や本部での仕事を経験してきました。
今シリーズは、そんな私がより良い店舗運営を実現していくためにできることを考えていくコラムです。
ご興味があればこちらもご覧ください。
店舗でのスタッフ育成はチェーンストアにおいても最重要業務といっても過言ではありません。
スタッフが成長していけば店舗力向上につながり、売上にも大きく貢献します。
その一方で、育成には時間がかかり、店舗の経費もかかるので、できるだけ効果的に取り組みたい業務だと思います。
私は店長時代に、今日ご紹介するようなフレームワークを活用し、工夫して指導することでスタッフを昇格させることができたり、自分の店舗から店長を輩出するといった成果につなげることができました。
今日はPDSサイクルをもとに店舗のスタッフ育成において大切にすべきことをご紹介いたします。
PDSサイクルとはPlan(計画)、Do(実行)、See(検証)の順に業務を改善するフレームワークです。
育成もこのサイクルに当てはめて実行することで、すべきことが明確になり成果を出せるようになります。PDSサイクルをもとに育成の工程を整理すると図1のようになります。
Plan(動機付け)、Do(教育)、See(改善)までの工程を終えると、また最初のPlanに戻り目標達成までPDSサイクルを繰り返していくことになります。
この各工程での目的や重要ポイントをご紹介していきます。
1.能力の把握は育成のはじめに必ず行いましょう。 ここで現状と目指すべき姿とのギャップを明らかにしておくで実行すべきことを明確にしておくことが大切になります。
この時に気を付けるべきことは、定性の情報と定量の情報をどちらも確認することです。
定量の情報だけに注目して、実際の行動を見ていないと多くの情報を見落としてしまいます。対象者の行動プロセスの中にその人の長所短所や考え方のヒントがたくさんあるはずです。このヒントを得ることができればその人に合った指導をすることができます。
そのために、まずは自分の目でそのスタッフがどのように仕事をしているのか観察してみましょう。
能力把握の際、業務のチェックシートなどをもとにその人の能力をリスト化しておくと内容が整理しやすくなります。
2.育成目標の立案においては以下の3つのポイントがあります。
ポイント1→育成目標を対象者とすり合わせる際、最初に育成した先にどういった成果を求めているのかや
対象者が新しい業務を習得するとどの数値が改善されるのかなど、目標に対して具体的なイメージを持っておくことが必要です。
この目標イメージがあいまいになってしまうと、目標達成へのプロセスを誤ってしまう可能性があります。
そうなってしまってはせっかく時間をかけて育成をしても効果を得ることができません。
ポイント2→優先順位を決めるとは、今の店舗の状況と対象者の希望との間で、今優先して習得すべきことはなにかを明確にすることです。
チェーンストアにおける店舗業務では習得すべきことがひとつではないことが多いため、習得途中に計画修正を行うことがあるかと思います。その際にもこの優先順位が明確になっていれば、なにを優先して習得すべきかスムーズに判断することが可能になります。
ポイント3→育成目標を立案する際は必ず育成目標の期限を決めましょう。
もし期限内の達成ができなかったとしても、計画を修正する際に期間中でできなかった理由を考えたり、次はどうすれば期間内に達成できるだろうかと具体的に結果検証でき、次にいかすことができます。
3.育成計画の立案では、育成目標を達成するための具体的な計画を作成します。
育成対象者にはトレーナーを付け、能力把握の内容や育成目標を共有することで対象者に適切な指導ができるようにします。
また、育成目標の達成期限に対していつまでにOJTを実施し、どんなツールを使って(業務マニュアルなど)教育していくのかを事前に決めておくことが大切です。
いつまでにOJTを行うのかについては、実施日を決めたら店舗における稼働計画に落とし込みましょう。店舗の他スタッフにも育成対象者が今、なにを習得中なのかわかるようにすることで目標達成に向けてのいいプレッシャーを与えることもできますし、店舗スタッフ同士で育成対象者のフォローをしあう風土も作ることができます。
次は実際に4.業務OJTの実施になります。
ここで大切なポイントには以下の2つがあります。
ポイント1→まずはなぜこの業務が必要なのか、そしてなんのために行うのかという業務の目的を伝えましょう。
対象者に対して清掃OJTを実施する際に、「この業務は次の昇給の為には必ず○にしないといけない業務だから」と伝えるのと「この業務を行うことでお客さまに気持ちよく買い物してもらえ、スタッフも気持ちよく働けるから」と伝えるのとでは対象者のモチベーションも変わってきます。
対象者自身が納得して業務習得に臨めるようにコミュニケーションをとることが大切です。
ポイント2→与える指導とは「目的や手順、注意点などを最初から最後まで手取り足取り教える作業」のことで、
考えさせる指導とは「目的や手順などを自分で考えさせたり、答えを引き出すための質問を行ったりする」のことをいいます。
与える指導では、指示通りに行動できるようになるが、臨機応変に対応できない、思考力が磨かれない、という側面があります。反対に、考えさせる指導では臨機応変に対応でき思考力も磨かれるが、指示通りの行動ができなかったり、できても時間がかかるといった面があります。
このようにそれぞれ長所と短所があるため、対象者の素質や能力に応じて割合を変えていくことが有効です。
また、素質や能力が高いほど与える指導より考えさせる指導の割合を増やしていくと効果的です。
以上のポイントに注意して育成対象者とコミュニケーションをとってOJTを進めましょう。
5.評価するということは、なにができてなにができなかったのかを明確に決めることです。
このとき、まず自己評価をしてもらいその後にトレーナーや上司が評価するようにしましょう。
まず自身で自己評価を行うことで、実際に上司と評価のすり合わせをする際の基準のすり合わせにもなります。ここでは評価者が自分の目で確認したうえで評価することが大切です。
6.フィードバックする際には以下の順に実施します。
①で評価の際は必ずなぜ○になったのかなぜ×だったのかを対象者が納得するまで説明する必要があります。ここで明確な評価理由をすり合わせておくことで次の改善につなげることができるためです。
そして、ここですり合わせた内容は②でなにかしらの形で履歴を残しましょう。私は評価を記入した業務チェックシートとともにメモを残して管理していました。そうすれば先々振り返る際にも困りません。
最後に③で次につながる動機付けを忘れずに行いましょう。フィードバックというとネガティブなものを想像する方が多いですが、良い点も伝えることが大切です。
私も店長時代にフィードバックを行う際は必ず良い点から伝えるようにしていました。そうすることでスタッフも自分の評価されている点を認識でき、自分の長所を知る良いきっかけにもなります。ここでは評価の良し悪しに関係なく次に向けて頑張ろうという気持ちにさせて終えることが重要です。
フィードバックまで終えたら、その結果をもとに再度「動機付け」の工程から次の業務習得に向けてサイクルを回していくことになります。このPDSサイクルを短い期間で繰り返しまわしていくことで、効率的なスタッフ育成を成功させることができます。
このようにPDSサイクルをもとに育成を進めていくことでやるべきことが明確になり、効果的に育成を行うことができます。
また、このPDSサイクルは能力を問わずあらゆる人に使うことができるため、人数が多く短期間での育成が必要になるチェーンストアにとってはとても有効です。
上記のようなポイントで店舗におけるスタッフ育成に取り組んでみてはいかがでしょうか。