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“Shopらんチーム認定”海外調査員のMayukoです。
今回の「#海外のお店レポ」のテーマは「顧客ロイヤルティ」。
忠誠心を意味する「ロイヤルティ」からも想像できるとおり、「顧客ロイヤルティ」は商品やサービスなどに対してお客さまが抱く信頼・愛着を指す言葉です。
似た言葉に「顧客満足度」がありますが、商品やサービスに満足するだけでなく、「顧客ロイヤルティ」が高いお客さまは長期的に利用を継続し、さらに周囲に勧めたりして商品・サービスの成長・集客に貢献してくれることもあるようです。
みなさんのお店では、どんなロイヤルティ・プログラムを実施しているでしょうか?
海外の小売ニュースメディアを見ていると、最近“Loyalty Program”という言葉をよく目にします。記事の主な内容は、さまざまな小売企業が刷新/新たに展開しているロイヤルティ・プログラムです。
そのなかで今回見つけたのが、「Members only: U.S. retailers revamp loyalty schemes for Amazon era」というタイトルの記事。この2年間でアメリカの小売企業が次々とロイヤルティ・プログラムを改変しており、この記事ではその背景や事例などに触れています。
今までは、繰り返し来店してもらうためのサービスとして、お客さまの利用に応じてクーポンやポイント/マイルなどを付与するのが一般的でした。
しかし、eコマースの普及によってお店に足を運ぶよりも安く手軽にショッピングができるようになり、さらに無料翌日配達や動画/音楽配信、クラウドストレージといったサービスを加えたAmazon Primeが登場したことで、ロイヤルティ・プログラムの水準が変化。金銭的な特典だけでは、お客さまに継続してお店を利用してもらうことが難しくなったのです。
そこで、“体験型”の特典をプログラムに取り入れる動きが出てきました。
出典
REUTERS: Members only: U.S. retailers revamp loyalty schemes for Amazon era
たとえば、アメリカの大手百貨店Macy’sではコンサートやファッションショーといったイベントのチケットを入手できたり、Macy’sの競合Nordstromではオンライン購入商品の店頭受け取りや美容・ファッションのワークショップへ参加できたり、会員限定のブランド商品の購入ができるそうです。
ブランドショップでも昨年、J Crewが無料配達や会員限定セールなどをスタートし、NIKEは会員専用フロアを持つ新たな旗艦店をニューヨーク市にオープンしました。
お客さまを獲得し、さらに継続して利用していただくために、高まるサービスの水準にあわせて小売企業も対応し続けていかなければならない時代。お店が生き残るには、会員となったお客さまが金銭的な特典以上にそのブランドならではの「特別待遇感」を持てるようなプログラムが求められているようです。
日本の小売店で一般的なロイヤルティ・プログラムというと、クーポンやポイントのように、お店を利用したお客さまであれば等しく受け取れるタイプの金銭的な特典が多いですよね。会員限定の先行販売やセールなども見かけるようになりましたが、体験型のサービスを提供するロイヤルティ・プログラムというとまだ珍しいのではないかと思います。
私自身は普段、ほとんど決まったブランドやお店で買い物しています。ブランドの好みや価格帯などもありますが、やはり会員に与えられるポイントやクーポンが一番の理由。別々のお店でバラバラにお買い物するより、決まったお店を利用するほうがポイントも貯まりやすいですから。
ですが、これもお店にとっては危うい状況ですよね。似たような特典を提供しているお店はほかにもあるけれど、たまたま最初に会員登録したお店でポイントがついたから継続して使ってみている、というお客さんであれば、ちょっとしたきっかけで競合に乗り換えることは十分考えられます。
(特定のブランドを挑発しているわけではないですよ!私は欲しいものが見つかりやすいお気に入りのブランドを利用しているので、乗り換える予定はありません笑)
購買体験もサービスも多様化している今、お客さまが離れていかないようにするためには、単純な「お得感」だけではなく、ほかのブランドとの差別化ポイントとなり、お客さまの感情的なロイヤルティを高める施策が必要です。
ほかの記事でも、限定のイベントやワークショップ、体験教室などへの参加に加え、誕生日にギフトを受け取ったり、オンライン・コミュニティでほかの会員と交流できるなど、さまざまなプログラムが紹介されていました。
なかでも独特のロイヤルティ・プログラムを実施しているのが、アメリカの靴専門店DSW。
さまざまな慈善活動を支援しており、その一環として貧困に苦しむ国地域のために靴の寄付を募っているそうです。2018年5月から約130万足もの靴が集まったとか。靴を寄付したVIP会員には1足につきポイントが付与されるのですが、このプログラムで大きな反響が得られたことで、DSWはさらに1歩踏み込んだプログラムを始動しました。
出典
Media Post: In Contest Twist, DSW Sends Loyal Customers On Antipoverty Mission
それは、靴を寄付したVIP会員自身が、ボランティアの一員として靴を届ける現場に参加できるというもの。今年の3月時点で、2,000を超える応募と、応募者の想いを込めたエッセイが集まったそうです。そのなかから選ばれた数名が8月にドミニカ共和国を訪れ、靴の配布をおこなう予定とのこと。
海外では慈善活動や寄付への意識が日本よりはるかに高く、ブランドや企業のファンになる要素として、こうした慈善活動や理念などが影響することもあるそうです。DSWの例は特にユニークなものですが、どのようなプログラムがお客さまの心を掴むかは国民性によっても変わるのかもしれません。
ちなみに、イギリスのチャリティー団体Charities Aid Foundationによる2018年の世界寄付指数ランキングでは、144ヵ国のうちアメリカは4位、日本は128位だったそう…日本人として悲しくなる数字ですね……
お客さまがブランド/企業になにを求めているのかを汲み取り、お客さまのロイヤルティを獲得するにはどうするべきか。ニーズやトレンドが次々と変化する今、購買行動のデータもうまく活用しながら、それぞれの企業が早急に考える必要がありそうです。
では、おもしろそうな情報があったらまたお届けしますね。
See you around:)
参考
DIGIDAY UK: ‘Amazon Prime was a game changer’: Retailers are rethinking loyalty programs
DSW: DSW VIP Ways To Give
DSW: DSW Shoe Donation Trip Contest
CAF: CAF WORLD GIVING INDEX 2018