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“Shopらんチーム認定”海外調査員のMayukoです。
「#海外のお店レポ」シリーズ、今回のテーマは「返品」です。
前回の記事「『BOPIS』と多様化する店頭受け取りサービス」では、返品プロセスも考慮に入れたNordstromによる店舗受け取りサービスの展開についてご紹介しました。
私自身は片手で数える程度しか返品した経験がないのであまり意識していなかったのですが、ほかの小売企業における返品対策がどうなっているのか気になり、今回のテーマにしてみました。
調べるまでよく知らなかったのですが、まず知っておくべきだったと感じたのが、日本と海外では「返品」に対する意識が大きく異なるということです。
日本だと「お客さま都合の返品や交換は受け付けておりません」と、商品やお店側の問題が原因ではない返品を断っているお店が多いと思います。Eコマースの影響か、最近は返品の条件を緩める傾向も見られるようですが、とはいえ商品に不備があるわけでもないのに返品することに抵抗や後ろめたさを覚える人も多いのではないでしょうか。
対してアメリカをはじめ海外諸国では、実店舗でもオンラインでも、ほぼ無条件で送料や手数料もかからず返品させてくれるお店がほとんどなのだそうです。お店によって返品可能期間や商品の状態などルールは異なりますが、使用済みでも食品でも、大体は返品に応じてくれるとか…日本だと考えられない慣習ですよね。
「オンライン時代にこそ注目!『顧客ロイヤルティ』」で紹介したロイヤルティ・プログラム同様、これもAmazonが世の中の基準を上げたサービスのひとつ。無条件・無料返品は特別なサービスではなく、新たなスタンダードとして定着しているようです。
今回テーマを決めたとき、以前「PayPal Ventures leads $11 million investment round in retail start-up Happy Returns」というタイトルの記事を読んだのを思い出しました。この記事ではPayPalがHappy Returnsに1,100万ドルの投資をしたことを取りあげていました。
出典
CNBS: PayPal Ventures leads $11 million investment round in retail start-up Happy Returns
Happy Returnsは、主に実店舗を持たないDTCブランドの返品プロセスを請け負うスタートアップ企業。
利用者は、ショッピングモールや大学キャンパス、一部小売店の350ヵ所以上に設置された「Return Bar」にオンライン購入した商品をそのまま持って行くだけで返品できます。商品を包装する手間もなく、アクセスしやすい場所に持っていけばその場で返金処理もしてもらえるので、気軽に返品ができるそうです。
返品された商品を仕分けして、商品の状態や条件によってクライアント企業が指定した場所に届けるところまで一貫してHappy Returnsが請け負います。
Happy ReturnsのCEOによると、購入品の返品率は、実店舗の5〜10%に対し、オンラインショップでは15〜40%。それだけの返品を処理するためには膨大な時間とコストがかかります。小売企業にとって、Happy Returnsは大幅なコスト削減と効率性向上につながるサービスなのだそうです。
当然ですが、オンラインストアでは購入前に商品を直接手にとって確認することができません。そのため、特にアパレルブランドのオンラインストアでは、「写真のイメージと違う」「サイズが合わない」という理由での返品が大量に発生しています。
無料で返品できるからと、サイズ違いや色違いで同じ商品を複数購入し、気に入ったものだけ手元に残してほかは返品、というケースも増えているそうです。
Eコマースの影響で返品が増加するなか、海外の小売企業は気前の良い「返品サービス」で自分の首を絞めていると言わざるを得ないこの状況。
サービスを乱用されるリスクにも関わらず無料の無条件返品をおこなうのは、消費者にとって無料返品ができるか否かがショッピングをする上で決め手のひとつになるから、というのが大きな理由のようです。ある調査によると、無料返品/交換サービスの有無や返品プロセスの快適さが購買行動や顧客満足度に大きく影響することがわかっています。
出典
Retail Dive: No free returns? More than half of shoppers won’t buy
この問題を解決するためのひとつの手段を提供しているのが先ほど紹介したHappy Returnsですが、ほかにも返品プロセスの請負サービスや返品専用のアプリを提供する企業が増えてきています。
外部に頼らなくても、返品を有料にしたり、無料返品を有料会員の特典にすることで返品への敷居を高くしたり、オンライン購入品の実店舗への返品(BORIS = Buy Online, Return In Store)を可能にしてコストを削減したり、品質管理やオンラインストアの商品情報を改善して返品そのものを防ぐなど、さまざまな対策が考えられます。
小売戦略などの専門家Brittain Ladd氏は、返品された商品だけを販売する店舗を作るというのもひとつの戦略だといいます。
小売企業の多くが返品された商品の25%を破棄し、年間約227万トンもの廃棄物を排出していることを考えると、このアイデアは実現すれば環境面でも効果が期待できそうですね。
日本では返品が海外ほど問題視されていないとはいえ、Eコマースビジネスの拡大に加え、インバウンド・在日外国人増加の影響や顧客ニーズの変化次第で、日本の返品事情も今後どう変わるかわかりません。
日本にもすでに返品・交換のルールや体制が整っているチェーンストアはありますが、まだまだ少数派だと思います。特にオンラインストアを持つ企業はRevolveの二の舞にならないよう注意を払う必要がありそうです。
では、おもしろそうな情報があったらまたお届けしますね。
See you around:)
参考
Shopifyplus: The Plague of Ecommerce Return Rates and How to Maintain Profitability
Retail Touch Points: Rise Of Returns: How Retail Can Combat Its $351 Billion Problem
Retail Touch Points: Tackling Retailers’ Growing Returns Problem In The Wake Of Shipping Increases
Forbes: The Retail Industry Has A Problem With Returns: ReturnRunners Wants To Be The Solution