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“Shopらんチーム認定”海外調査員のMayukoです。
「#海外のお店レポ」シリーズ、今回のテーマは「飲食店のパーソナライゼーション」です。
海外の小売・サービスの情報を探していると、サービスの「パーソナライゼーション」に対するニーズや取り組みについて話題になっているのをよく見かけます。
「オンライン時代にこそ注目!『顧客ロイヤルティ』」や「こんなにも違う!日本と海外の返品事情」でご紹介したサービスと同じように、これもまたEコマース、特にAmazonがサービスの水準を押し上げた一例ですが、その影響は「ショッピング」にとどまりません。話題の大半が小売業界に関するものですが、最近は飲食業界も後を追うように動き出しているようです。
今回見つけたのは「79% of diners interested in personalized menu recommendations, report finds」というタイトルの記事です。この記事では、レストラン利用客の79%が個人にあわせたメニューのレコメンドに関心を示しているなど、PSFKによる飲食業界における新たなニーズについての調査レポートを紹介しています。
近年、消費者の関心は「オンデマンドで」「便利な」「パーソナライズされた」サービスへと向いてきています。当然この変化の影響は飲食業界にも広がり、こうした新たなニーズに応える取り組みを始める飲食店が増えてきています。
たとえばアメリカのマクドナルドはこの2〜3年、サービス向上のためアプリ開発やセルフ注文端末、デジタルサイネージなど、新たなテクノロジーを次々と取り入れています。
特に今年3月、AIによるパーソナライゼーションに特化したイスラエルのスタートアップ企業Dynamic Yieldを買収したニュースは注目を集めました。これによって、ドライブスルー利用客の注文履歴、注文時間、注文時の天気といった情報を集め、個人に合わせたメニューの提案を実現。ドライブスルーにおける顧客体験の改善を図っています。
出典
Restaurant Dive: 79% of diners interested in personalized menu recommendations, report finds
今、米マクドナルドは平均店舗売上高の伸び率で競合に差をつけているそうです。消費者の期待や要望の変化に応じて、いち早くテクノロジーを活用することが業界で優位に立つカギになるという点は、飲食業界においても変わらないようです。
飲食店がただ「買って食べられる」だけの場所のままでは、この先消費者のニーズに応えきれなくなっていきます。「行きやすい」「早い」「安い」を超えた「利便性」をいかに実現するかは重要なポイントのひとつです。
しかし利便性を高めるためと言って、ただテクノロジーを使えばいいというものでもありません。
デリバリーやクリック&コレクト(オンラインで注文して店舗で受け取るサービス)をウェブサイトやアプリから注文できても、画面をスクロールしながら全メニューから食べたいものを探すのはメニューの種類が多いほど面倒。モバイル端末の小さな画面であればなおさらです。自分の好みにあったおすすめメニューや、よく注文するメニューから順に表示されていれば楽なのに…と思ったことがある方も少なくないはず。
近年は食物アレルギー症状を持つ人が増えているようで、私の周りにもアレルギーに悩まされている人が何人かいます。そういった人たちにとっては、好みの問題以前にはじめから自分に影響のあるアレルギー物質が含まれるメニューを非表示にする設定ができた方がいいかもしれません。
そのためには、当然ですがまず情報を集める必要があります。
たとえば、アプリでユーザーにプロフィール情報を入力してもらったり、POSや顧客管理システムでアレルギーや好みのメニュー、過去にあった席の希望などを管理しておいたりするなど、情報の取得・管理方法はいろいろあると思います。
このようなデータを活用すれば、おすすめメニューを優先表示させるだけでなく、1人ひとりにあわせたクーポンやキャンペーン情報を送れますし、来店時には毎回希望を伺うことなく、新人スタッフでもお客さまの好みのお席へのご案内や対応が可能になるでしょう。さらにKDS(Kitchen Display System)と連携させれば、より確実なアレルギー対応や、誕生日のサプライズなどもスムーズにできるようになります。
そういったきめ細かいサービスが可能になれば、顧客ロイヤルティも格段に向上するはずです。
なかには、さらに細かいレベルでパーソナライゼーションを実現したレストランもあります。
遺伝子情報をもとにパーソナライズされたヘルス/フィットネスのサービスを提供するDNAFitと共同で、メニューの「超パーソナライゼーション」を実現したのが、ロンドンにあるVita Mojo。好みやライフスタイル、アレルギー情報だけでなく、個人の遺伝子構造に適したカスタムメニューを注文できるレストランです。
出典
KTCHNrebel: Ultra-personalization: the next big thing?
DNAFitがお客さまのDNAサンプルを分析し、Vita Mojoのアプリや店舗のタブレット上で条件に当てはまるカスタムメニューを表示。注文された料理は5分以内に提供されるそうです。
もちろん、自分の遺伝子情報を知られるのはちょっと…という人は好きなメニューを選ぶこともできます。全メニューにはそれぞれカロリーやアレルギー物質、成分などを表示しており、自分できちんと栄養管理をしたい人にも喜ばれそうな配慮がされています。
遺伝子情報の提供に抵抗を感じる人はいるかもしれませんが、PSFKによる調査では84%がより良いサービスを受けられるなら注文履歴などの個人情報を提供すると回答したそうです。
スタッフの入れ替わりが特に多いとされる飲食業界で、スピードを求められるファストフードレストランであればなおさら、個々のお客さまにあわせた対応の実現はなかなか難しいところがあると思います。しかし、顧客情報をうまく活用することで、お客さまの期待以上のサービスや体験を提供することも可能になるでしょう。
「いつでも、どこでも、欲しいものを、簡単に」という今の消費者のニーズに応えるサービスを実現するため、飲食業界ではほかにどんな取り組みがされているのか。次の機会にまたご紹介したいと思います。
では、おもしろそうな情報があったらまたお届けしますね。
See you around:)
参考
Forbes: Retail Executives Should Follow Walmart CEO Doug McMillon’s Lead And Visit Israel
Forbes: How Restaurant Personalization Can Create The Ultimate Dining Experience
Food Newsfeed: How Restaurants Can Personalize the Customer Experience
CO: Restaurants Play Catch-Up with Data Analytics to Personalize the Fast-Food Experience
Modern Restaurant Management: The Changing Face of Restaurant Personalization and Customer Experience