事例のココに注目!!
- コミュニケーションツールを一本化。店舗・本部・エリアマネージャー間の確実な情報伝達
- 店舗のタスク処理状況を可視化。効率よくきめ細やかな店舗運営が可能に
- エリアマネージャーの集計作業を「ゼロ」に。その時間を店舗のフォローや指導へ活用
外食業界大手のコロワイドグループにおいて、「焼肉 牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」「居酒屋 土間土間」「かまどか」をはじめとする多彩な飲食店ブランドの運営、フランチャイズビジネスを展開するレインズインターナショナル(以下、レインズ)。
2020年来のコロナ禍以降、消費者の生活様式や社会環境の変化に伴い外食産業では収益構造の改革が急務となったため、レインズは既存ブランドに加え、新業態でのビジネスにも積極的に取り組みながら着実に成果を上げている。
経営企画部 相馬 和
「特にフードコートへの出店をメインにした“牛角 焼肉食堂”や、とんかつ店の“とんかつ神楽坂さくら”といったダイニング形式の新業態を中心に出店数を増やしており、順調に推移しています」 そう話すのは、レインズ、経営企画部の相馬 和 氏だ。
同社では、ブランド総計で国内1,000店を超える店舗と本部間のコミュニケーションを効率化し、業務工数の削減を図ることを目的として、ドリーム・アーツが提供する本部-店舗間コミュニケーションに特化したクラウドサービス「Shopらん(ショップラン)」を導入した。
コミュニケーションツールの乱立で店舗業務が煩雑に
レインズではITを通じて業務効率化に継続的に取り組んできた。店舗・本部・エリアマネージャー間のスムーズな情報共有が、多店舗運営における業務効率化に必須であると考えているものの、そこに大きな課題があると認識。特に情報共有ツールの乱立と、エリアマネージャーによる集計業務の負荷が高いという問題に直面していた。
同社は事業拡大の過程で社内にさまざまなコミュニケーションツール、情報共有ツールを順次導入。一般的な電子メールに加え、グループウェアやスケジューラー、チャットツールなど複数のツールを使い分けなければならない状況だったという。
店舗では、多いときには1日に10通以上送られてくる本部からのメールに加え、複数のツールに分散して発信される情報を個別に確認する必要があった。さらに店舗の責任者は、対応すべき情報を選別し、優先順位を判断してタスク管理をおこなわなければならず、その作業負担が増大していた。
本部においては店舗に発信している情報全体が把握しづらく、店舗の負荷状況がわからないことが課題に。また、本部から店舗へのコミュニケーションは「指示」という形で一方通行になってしまうため、店舗からの相談や意見を吸い上げることができていないのではないかという懸念もあった。
エリアマネージャーについては1人あたり約10店舗を管轄しており、業務指示に対するリマインドを各店舗の責任者へ個別に行っているなど負担も大きかった。また、在庫情報などを取りまとめる際、各店舗から受け取ったExcelファイルを一つずつ開いて確認し別のファイルへ情報を転記。人手による作業はミスが起こりやすく、特に大きな負担となっていたという。
レインズでは、こうした情報伝達・情報共有の非効率な状況を改善すべく、2019年から新たなコミュニケーションツールの検討を開始した。相馬氏は「デジタル領域へ投資することにより、店舗業務で生じている無駄を排除し、効率を上げる取り組みにつなげていきたいという経営側の強い思いがありました」と当時を振り返る。
求めていた要件を最も高いレベルで満たす「Shopらん」を導入
- 新ツールの検討にあたり、同社では主な要件として以下の3つを設定した。
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- 本部からの伝達や複数の関係部署からの連絡を“統合”できること
- 店舗のタスク処理状況を“可視化”できること
- 店舗責任者やエリアマネージャーの情報集計作業工数を削減できること
これらの要件に基づき、複数の製品を比較検討した。
「Shopらん」は、上記の要件を十分に満たすことに加え “レインズに匹敵する大規模チェーンでの導入実績が豊富なこと”や、“ドリーム・アーツのサポートや将来的な機能強化にも期待が持てる”という評価もあり、同社は導入を決定した。
レインズでは、2022年9月より牛角の直営店舗や一部のフランチャイズで「Shopらん」の試験導入を開始。その後2022年11月、2023年1月と段階的に導入ブランドと店舗を増やし、同年3月には約1,062店舗への導入を完了した。
大規模な新ツール導入にあたり、業務現場の活用促進のためさまざまな工夫をおこなった。システムの利用方法の説明だけでなく、導入の目的や意図を社内全体に浸透させることが特に重要だったという。「Shopらん」導入を推進した牛角・温野菜営業本部の高田 直樹 氏は「本部長クラスから、マネージャー、店舗に対し、複数回の説明会を開催した」と話す。
「まずは本部長、部長クラスが新しいツールを自ら使わなければ、事業部や店舗の現場を巻き込むことはできません。そのため、まずは役割ごとに導入の目的や背景を伝え、その後使い方を覚えてもらう構成での説明会を複数回実施しました。
牛角・温野菜営業本部の本部長は、導入に先がけて自らShopらんを使い込み機能をチェックして、現場での導入をスムーズに進めるための方法を検討していました」(高田氏)
創出した時間を顧客への「価値」提供につなげる
レインズの本部と1,000を超える店舗で「Shopらん」の本格運用が開始されたことにより、導入以前に感じていた情報伝達・情報共有にまつわる課題の多くは改善が進んでいる。
店舗からみた効果
接客などのコア業務にかける時間を創出、情報集約によりやるべきタスク整理を簡単・確実に実施
同社では、これまでメールをはじめとする複数のツールを併用して行っていた業務上のコミュニケーションを「Shopらん」に一本化した。これにより、店舗側での情報確認や対応事項の整理にかかる手間が削減され、情報の「見落とし」や「実施漏れ」が起こりにくくなった。
本部側では「Shopらん」の機能をもとに情報発信の工夫もしている。
「“お知らせ”機能では、Shopらんのテンプレートなども駆使しながら、件名に統一性を持たせ、さまざまな業態や地域で情報を見る担当者が、それが自分に関係のある情報なのか、対応すべきものなのかを容易に把握できるように工夫しています」(高田氏)
本部から店舗全体への「お知らせ」を配信する“タイミング”についても整理を行った。情報配信の曜日や時間をあらかじめ決めておくことで、店舗責任者は最大でも出勤時、営業前、営業後の1日3回、「Shopらん」を見ることで、業務に必要な情報を把握できるようになっている。
「情報配信のルール決めができたことで、店舗側では必要な対応を行うタイミングを、従来よりもスケジューリングしやすくなりました。より有効に時間を使い、接客などのコア業務にリソースを割けるようになっていると思います」(相馬氏)
本部からみた効果
店舗の状況が可視化され、効率良くきめ細やかな店舗運営を実施可能に
先述の通り、本部から店舗への通達事項はすべて「Shopらん」の「お知らせ」機能に集約された。これにより本部側でも、発信した情報の既読・未読といった状況が把握できるようになったという。各店舗の実施状況を瞬時に把握して、未実施の店舗へのリマインドまで「Shopらん」で完結。店舗の業務負荷を調整することが可能になった。
また、「業務アプリ」を活用することで、さらに質の高いコミュニケーションを実現しているという。「業務アプリ」機能では、「チラシ発注依頼」や「ポイント後付申請」など小売業によくある業務をノーコードでデジタル化できる。あらかじめ用意されたテンプレートをベースに、簡単に自社のニーズに合ったアプリケーションを作成できるのが特徴だ。業務上の連絡をメールではなく関係者全員に共有されるアプリで行うことで、情報の見通しが良くなり状況の把握が容易になった。
主な活用領域としては「エリアマネージャーと店舗間のやりとり」「店舗から本部への相談、確認」などさまざまだ。
「業務連絡をメールでしていた時には、そのCCの宛先に入っている人の間でしか状況が把握できていませんでした。例えば、メールで何らかの対応を依頼した場合、その進捗が分からず、結果的にギリギリになったり遅れたりすることも少なくありませんでした。今はShopらんを通じて、本部と店舗の間でどのようなやり取りが進んでいるのかを、関係者全員が把握できるようになっています」(高田氏)
「情報共有がShopらんで行われるようになったことで、発信した内容に対するちょっとした反応なども、以前よりもよく見えるようになりました。“メールに返信”するよりもお知らせへ“コメントを投稿する”ほうが、ユーザーにとってもリアクションのハードルが低いようです。配信側としては、情報の送り方による反応の違いなどもわかるようになってきており、今までと比べて本部と店舗との心理的な距離が少し縮まったように思います」(相馬氏)
エリアマネージャーからみた効果
集計業務にかけていた時間を、店舗のフォローや指導に活用
ツールの集約による情報収集の効率化は、エリアマネージャーにとっても歓迎すべき変化だったという。レインズで牛角第二営業部のエリアマネージャーを務める中川 勝 氏は「複数のツールを見る必要がなくなり、重要な情報を見落とすことがなくなりました。また、メールの確認時にうっかり業務に関係のないメールや迷惑メールを開いてしまい、ストレスを感じることも減っています」と話す。
特にエリアマネージャーの大きな負担となっていた集計作業は不要になった。
「従来は、店舗から各担当部署への報告事項を、エリアマネージャーが月に3回程度取りまとめて本部に提出していました。担当している店舗数などにもよりますが、1回の取りまとめに約45分かかっていたので、1ヵ月あたり約135分の作業時間が削減できていることになります」(中川氏)
レインズには、全国に約90人のエリアマネージャーがいる。大まかに試算すると、全社での「取りまとめ」作業の時間削減効果は約200時間/月となる。
エリアマネージャー 中川 勝
「われわれは接客業なので、店舗に来てくださっているお客さまとの関係を深め、満足していただくのが本来の仕事です。今まで集計業務にかけていた時間を、お客さまとの時間に活用していきたいと思っています」(中川氏)
集計の作業時間がなくなったことは、店舗から本部へ報告される情報の「質」の向上にも寄与しているようだ。高田氏は「“回答フォーム”機能などを利用することで、情報の入力方法が標準化され項目の不備や転記時のミスなどによる手戻りの工数も減っています」と評価する。
また相馬氏は、「Shopらん」で削減された作業時間と、集約された情報の質的な向上が「エリアマネージャーの仕事にも変化を起こしつつある」と話す。
「以前の状況では、必要な情報を“集計すること”自体が作業の目的になってしまっていました。今ではShopらんに集まった情報の質や内容を吟味し、それをもとにした店舗の指導やフォローにエリアマネージャーの仕事内容が変化してきています。集まる情報の質をどう高めるか、質の高い情報から事業に貢献できる知見をどう引き出すかということに、意識を向けることができるようになっています」(相馬氏)
効率化で生まれた時間を顧客への「価値」へ還元するツールに
レインズでは、店舗業務で使われている他システムとのより緊密な連携なども視野に入れながら、「Shopらん」の活用範囲を広げていくことを検討している。今後、ドリーム・アーツへも積極的に意見を伝えながら展開を考えたいという。
「Shopらんを、レインズで展開しているより多くのブランドや業態、さらには関連会社にまで広げていくことができれば、そこから生まれるメリットはさらに大きなものになるだろうと考えています。今後も引き続き、ドリーム・アーツにわれわれのビジョンやニーズを伝えながら、より効果的な活用方法を探っていきたいと思います」(高田氏)
「われわれが新たなツールの導入で実現したかったのは、店舗の現場が不要な作業に時間を取られず、本当に働きやすい環境を整えていくことです。Shopらんは、その可能性を十分に備えたツールだと思います。業務の効率化で生まれた時間を、しっかりとお客さまへ提供する価値に還元できるよう活用していきたいですね。ドリーム・アーツには、引き続きその取り組みを支援してもらえることを期待しています」(相馬氏)