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“Shopらんチーム認定”海外調査員のMayukoです。
「#海外のお店レポ」シリーズ、今回のテーマは「ドラッグストア/薬局のオムニチャネル化」です。
アメリカの大手ドラッグストアチェーン売上高ランキングをつくると、どの企業が上位に入るか知っていますか?
Walgreens、CVS(コンビニの略語ではないです)、Rite Aidなどは日本でいうマツモトキヨシやウエルシアのようなみなさんもお馴染みの「ドラッグストア」ですが、日本と違うのは、上位5位に大手スーパーのWalmartとKrogerの名前が入ってくる点です。
以前「スーパーの店内に○○が!進化を続ける海外の小売店」でお話ししたように、アメリカのスーパーにはありとあらゆるカテゴリの商品が揃っていて、他業種の店舗内店舗も少なくありません。スーパーの店舗内にドラッグストアのセクションがあるのも珍しいことではないのです。
近年、こうした他業種企業の参入に加え、オンラインサービスの普及でますますビジネス環境が厳しくなるなかで、ドラッグストアや調剤薬局でも利便性を向上して客離れを防ぐための取り組みが増えています。
今回見つけたのは「Kroger expands Express store pilot with Walgreens」というタイトルの記事です。この記事ではアメリカの大手スーパーKrogerと大手ドラッグストアWalgreensが、互いの店舗内店舗の数を増やす、というニュースを取りあげています。
2社のパートナーシップは2018年10月にスタート。KrogerのPB(プライベートブランド)の食料品などを、Walgreensの店舗に展開すると同時に、WalgreensのPBの健康・美容品や市販薬などをKrogerの店舗で販売するという、相互の店舗内店舗出店が実現しました。
他業種小売企業に売り場を提供し、来店客数や売上を改善することが狙いのひとつです。
出典
Grocery Dive: Kroger expands Express store pilot with Walgreens
さらに、Walgreensの店舗ではKrogerのオンラインストアで購入した商品の受け取りもできるようになったそうです。
アメリカ国内における競合の大手スーパーWalmartの店舗数5,000以上に対し、Krogerは3,000店舗未満。一方、Walgreensは9,650もの店舗を持つドラッグストアチェーンです。受け取りサービスを実施している店舗はまだごく一部ですが、もし全店舗に展開されたら1万を超える店舗でオンラインストア購入商品の店頭受け取りが可能になります。「BOPIS(Buy Online, Pickup In Store)」の需要が高まるなか、利便性向上の大きな貢献ポイントになることは間違いありません。
Walgreensは、Krogerのほかにもさまざまな他業種企業と提携し、幅広い商品やサービスを提供しています。国際輸送サービスで有名なFedExや「新たなショッピングの姿 サブスクリプション」でもご紹介した化粧品サンプルのサブスクリプション型オンラインストアBirchbox、携帯ショップSprintやリテールクリニックHumanaなど、ドラッグストアとは思えない広い領域をカバーしています。
オンラインショッピングの普及でさらなる利便性が求められるようになった今日、「欲しいものを、好きなときに、好きな場所で」という消費者のニーズに応えるため、ドラッグストアや調剤薬局もサービスを進化させています。
以前「BOPISと多様化する店頭受け取りサービス」という記事で、オンライン購入商品の店頭受け取りサービスの拡大についてお話ししました。先ほど触れたようにWalgreensはKrogerと提携しましたが、Rite Aidの約1,500店舗ではAmazonで購入した商品の受け取りができるそうです。
また、ドラッグストアの一角に調剤薬局が入っているのは日本でもよく見る光景です。忙しいなか病院近くの調剤薬局に行かなくても、家や職場近くのドラッグストアで処方箋を受け付けてもらえるのは助かりますよね。
しかし、薬局のソファで患者さんが何人も薬の受け取りを待っている光景も、珍しくないと思います。空いているときでも必ず発生する待ち時間は、みなさんも経験したことがあるはず。
ある調査によると、アメリカの薬局で薬が処方されるまでの待ち時間は平均12分だそうです。スーパーやドラッグストアに入っている薬局であれば、待つ間に買い物をして時間を潰すこともできますが、それでも「顧客体験」の視点から見ると改善が必要だということは否定できません。
実際、待ちきれずに薬を受け取らないまま帰ってしまったり、質問や説明を聞く時間を惜しんで薬を受け取ったらすぐさま帰ってしまったりという人が後を絶たないようです。結果、アメリカでは約30%の処方箋が使用されず、患者さんの75%は指示にきちんと従わず薬を服用してしまっているとか。こうした服薬の不履行は12万5千人の死亡や入院の10%の原因とされ、大きな問題になっています。
出典
PYMNTS.com: Can Click-And-Collect Innovate Pharmacy’s Last Mile?
「BOPIS」は、この状況を改善するための策のひとつでもあるのです。
Walgreensには処方薬受け取り用のドライブスルーもあり、さらにスムーズな処方薬の受け取りが可能。CVSは有料の会員プログラムを提供しており、処方薬・市販薬や日用品などの無料配送サービスを提供しているそうです。
処方薬が準備できたら患者さんに通知を送り、保険の適用まで配慮した支払いができる専用のアプリもでてきているなど、薬局の利便性もどんどん向上しているようです。
とはいえこうしたサービスが可能なのは、日本と違ってアメリカでは処方箋がオンラインで発行されるからこそ。病院が発行したオンライン処方箋が共有されれば、薬局は患者さんが処方箋を持ってくるまで待つ必要もないため、先回りして薬の準備ができ、患者さんの待ち時間を削減できます。
今日本ではまだ処方箋は紙で発行されていますが、オンライン処方箋が普及したら、顧客(患者?)満足度だけでなく、薬剤師の業務効率化やペーパーレスなどさまざまな改善が期待できそうですね。
オンライン処方箋やBOPISがまだ普及していない日本のドラッグストア。オンライン施策としては、アプリやSNSアカウントを使ったクーポンやセール情報の配信など、まだまだ*O2Oの域を出ていない印象があります。
それに対し中国やアメリカでは、今*OMOへのシフトが急速に進んでいます。これまでの記事でもいくつか事例はご紹介してきましたが、OMOは「顧客体験」に重点を置いたサービス改善・ビジネス展開に向けた大きな動きのひとつです。日本でも、ECサイトを立ちあげたドラッグストア企業が出てきていますし、これから利便性向上の取り組みは活発化していきそうです。
*「O2O」と「OMO」
・O2O(Online to Offline)=オンラインからオフラインへの誘導
・OMO(Online Merges with Offline)=オンラインとオフラインの融合
では、おもしろそうな情報があったらまたお届けします。
See you around:)
参考
Drug Channels: The Top 15 U.S. Pharmacies of 2018: M&A Reshapes the Market
NRF Stores: Walgreens’ technology upgrade helps merge digital and physical for associates, managers and customers
Retail Dive: CVS expands paid membership program nationwide
Adweek: Now You Can Pick Up Your Amazon Orders at Rite Aid